SAP IBPのユーザ画面
リンク:SAP Integrated Business Planning, add-in for Microsoft Excel UI
IBPユーザが使用する画面は大きく分けて2種類あります。
- Excel Add-In
- Webブラウザ(SAP Fiori)
それぞれの用途と使用想定ユーザを整理しましょう。
Excel Add-In

Excel Add-In はその名前の通りExcelアドインをインストールして、Excel上で使用することができます。ただし、ExcelからIBPサーバに接続することになるため、ローカルで使用する通常のExcelファイルと比べると、使用上の制約があったり、書式設定に数秒のロード時間を要したりします。
用途は計画の確認・入力です。
使用想定があるユーザは、営業部門やSCM部門です。営業部門が需要調整の結果を入力し、SCM部門が供給調整の結果を入力するようなイメージです。
Excel Add-Inの利点は、大きく2つあると思います。
- ユーザが慣れているExcel UIからIBPに接続できること
- 割と大きな(数千行程度の)計画データを一度に表示できること
現在の国内のSAP IBPの使われ方として、WebブラウザよりもExcel Add-Inが中心です。
後述するWebブラウザはあくまで補助的な利用に留め、基本的な業務はExcel Add-Inで完結するような業務設計が一般的な国内事例かと思います(理由は後述)。
Webブラウザ(SAP Fiori)

Webブラウザはソフトウェアのインストールなしで、Web上でログインすれば使用できるUIです。
用途はダッシュボードなどFiori独自アプリの利用です。
使用想定があるユーザは、営業部門やSCM部門をはじめ、システム部門、経営層などです。
Webブラウザ(SAP Fiori)の利点は、大きく1つあると思います。
- Fiori独自アプリが利用できること
具体的には、ダッシュボード(分析ストーリー)、カスタムアラート、手順プレイブックといったアプリが挙げられるでしょう。
なぜWeb UI (Fiori)の本格的な利用が検討されないのか
多くのIBP導入プロジェクトでは、「95%の計画業務はExcel Add-Inで行い、ダッシュボードだけWeb UIで確認します」というような機能配置になるでしょう。
なぜでしょうか。
理由は2つあると考えています。
- Web UIで計画業務を実現する導入工数が全くない
- IBPで最小権限を実現することが難しい
1.足りない導入工数(プランナーワークスペース)
最初のリンクでも紹介されていますが、Excel Add-Inでの確認・入力だけでなく、実は「プランナーワークスペース」というFioriアプリがあります。
一方で、これを計画業務の主要アプリとして使用している国内企業は2020-2030年時点ではあまり聞きません。
Excel Add-Inと用途が重複しており費用対効果がないのです。
ここで、プランナーワークスペースの利点を紹介します。
- カスタムアラートなど他のアプリと連携できる
- IBPのExcel Add-InによるPCメモリの使用負荷を軽減できる
ただしこれらはあくまで、あったらいいな、いわゆるNice to Have要素に当たります。さらに言えば、ほとんどUIを多様化するだけの効果しかないため、Nice to Have要素の中でも優先度は低くなります。
一方で、Excel Add-Inに加えてWeb UIでも計画業務ができるようにプランナーワークスペースを設計開発するには、1.2-1.8倍の導入工数が必要になるでしょう。
システム導入のコストは限られており、ほとんどのシステム導入プロジェクトでNice to Haveを実現する工数はありません。
導入時にExcel Add-Inと並行してプランナーワークスペースを導入することは避けるべきだと考えます。
ユーザにとってもベンダーにとっても収集がつかなくなります。
2.最小権限の難しさ
ある機能Aを使用するときに権限の観点では、Excel Add-InでもWeb UI(Fiori)でも同一の権限である、という問題があります。
簡略化した例を挙げます。
アプリケーションジョブテンプレートという機能があります。この機能は結構いろんなIBPのジョブを実行できます。例えばマスタデータを変更したり、需要予測を実行したりできます。
この機能はExcel Add-InでもWeb UIでも使用できます。
問題は最小権限の原則に従うとき、この機能の権限制御が複雑だということです。
簡略化すれば機能制御では「アプリケーションジョブテンプレートを使用できるか否か」を設定します。
ここで権限に関わらず、Excel Add-Inから使用できるアプリケーションジョブテンプレートはExcel Add-In側の制約で決まります。
リンク:SAP Help Portal | Creating Application Job Templates for Planning UIs

つまり、アプリケーションジョブテンプレート機能に対して、Excel Add-Inにおける使用可能範囲に合わせてWeb UIにおける使用可能範囲を制御することは難しいです。
例えば、マスタデータを削除するアプリケーションジョブテンプレートPは使わせたくないが、自動計画立案をするアプリケーションジョブテンプレートRは使えるようにしなくてはならない、という制御が難しいのです。
実際には権限制御単位(権限オブジェクト)を厳密に定義することによって対応が可能なのかもしれません。
が、少なくとも私の知る限りでは、「権限は与えるが、Web UIでの使用を前提とする業務設計にしない」という方針が国内導入プロジェクトでの通例かと思います。
よって、Web UIの最小権限が難しいため、Web UI (Fiori)の使用は最小限にし、Excel Add-Inでほとんどの業務を完結させる方向になります。
Web UI (Fiori)が悪いわけではないけれど…
私は断じて、SAP IBPのWeb UI (Fiori)を否定しているわけではありません。ユーザ目線でも便利なアプリが多いと思います。
ただし、「導入時にWeb UI (Fiori)の本格的な活用を目指すことは推奨できない」と意見しておきます。
※カスタムアラートなどのFiori独自アプリはその限りではありません。
まずはExcel Add-Inを中心とした業務設計のもと、SAP IBPを導入することを推奨します。
そして運用が安定した後に、Web UI (Fiori)の本格的な活用を目指す新しいプロジェクトを計画することになるでしょう。
SAP IBPを構成する基本概念の概要は以下の記事をご覧ください。