- Step.1 マスタデータタイプとは【概要レベル】
- 1-1. なぜマスタデータ ”タイプ” と呼ぶか
- Step.2 マスタデータタイプとは【業務ユーザレベル】
- 2-1. マスタデータタイプの種類(単一/参照/複合)
- 2-2. マスタデータワークブック
- 2-3. 各マスタデータタイプの概要
- 2-3-1. Currency (単一)
- 2-3-2. Target Currency (参照)
- 2-3-3. Exchange Rate (複合)
- 2-3-4. Product (単一)
- 2-3-5. Target UoM (単一)
- 2-3-6. UoM Conversion Factor (複合)
- 2-3-7. Customer (単一)
- 2-3-8. Customer Product (複合)
- 2-3-9. Location (単一)
- 2-3-10. Location Product (複合)
- 2-3-11. Customer Source (複合)
- 2-3-12. Location From (参照)
- 2-3-13. Location Source (複合)
- 2-3-14. Resource (単一)
- 2-3-15. Location Resource (複合)
- 2-3-16. Transportation Resource (複合)
- 2-3-17. Production Source Header (単一※)
- 2-3-18. Production Source Item (単一※)
- 2-3-19. Production Source Resource (単一※)
- 2-4. S/4 HANA ↔ IBP 連携の考え方
- Step.3 マスタデータタイプとは【システム担当者、カスタマイズ設計開発者レベル】
Step.1 マスタデータタイプとは【概要レベル】
マスタデータタイプとは「マスタデータのテーブル構造」です。
具体例でいえば、
- UP1PRODUCT(Productマスタの構造定義)
- UP1LOCATION(Locationマスタの構造定義)
- UP1PRODUCTLOCATION(Location Productマスタの構造定義)
- UP1SOURCELOCATION(Location Sourceマスタの構造定義)
などのマスタデータの構造をマスタデータタイプと呼びます。
これらはユーザ企業の要件に合わせて追加定義することができます。例えば転送計画数量をもとに転送コスト金額を算出したい要件がある場合に、Location Sourceだけでは製品レベルでの登録が必要になりますが、製品IDを除いた転送元Location、転送先Locationだけをキーとする
- UP1LOCATIONLOCATION(追加定義したLocation Locationマスタの構造定義)
という属性を定義して、転送コストを設定することができます。
1-1. なぜマスタデータ ”タイプ” と呼ぶか
SAP IBPではマスタデータやマスタテーブルとは呼ばず、マスタデータタイプと呼びます。
理由は、SAP IBPではテーブルという概念がなく、計画範囲(Planning Area)に割り当てられた”属性(Attributes)”に対して値を格納するためです。
イメージとしては以下のようになります。
あくまでマスタデータは「属性の値」であり、マスタデータの括りをマスタデータタイプと呼びます。

よって、SAP IBPではマスタデータタイプを通して属性に値を格納しているため、マスタデータ”タイプ”と呼びます。
ただし、業務ユーザの観点でいえばシステム構造の特徴は業務上重要ではありませんので、 マスタデータタイプ=マスタデータ と捉えていただいて問題ありません。
Step.2 マスタデータタイプとは【業務ユーザレベル】
上記の通りマスタデータタイプはマスタデータとなる属性を括る単位です。
厳密には異なりますが、役割としてはマスタデータテーブルと同じです。
ここでは、導入検討段階や導入PJ中のユーザを対象に、主要な「マスタデータタイプ(Master Data Types)」についてご説明します。
まずはマスタデータタイプの全体像をおさえましょう。
業務ユーザのマスタデータ管理者が覚えておくべき主なマスタデータタイプのつながりは以下の通りです。
各マスタの概要は後述します。

※Location ToやComponent、あるいはLagやSubnetwork、または需要ドライバのためのRisks and Opportunitiesなどのマスタデータタイプもありますが、特定要件や設計上の話に寄ってしまうため割愛します。
2-1. マスタデータタイプの種類(単一/参照/複合)
マスタデータタイプの種類には、単一/参照/複合/仮想/外部 があります。業務ユーザ目線では単一/複合マスタデータタイプを覚えていただければと思います。
2-1-1. 単一マスタデータタイプ
独立してレコードを保持することができます。参照/複合/仮想マスタデータタイプの起点となるマスタデータタイプです。
例 :Currency、Target UoM、Customer、Product、Location、Resource、Production Source Header、Production Source Item、Production Source Resource

2-1-2. 参照マスタデータタイプ
参照元の単一マスタデータタイプのレコードに従属してレコードが自動的に生成/更新/削除されます。独自の項目は保持しません。
例:Target Currency、Location From

2-1-3. 複合マスタデータタイプ
複数の単一/参照/仮想マスタデータタイプに従属したキー項目のみを許容してレコードを保持します。自動的に生成されるわけではなく、ユーザが(またはS/4からの連携により)レコードを登録する必要があります。複合マスタデータタイプ独自の項目を保持します。
例:Exchange Rate、UoM Conversion Factor、Customer Product、Customer Source、Location Product、Location Source、Transportation Resource、Location Resource

2-1-4. 仮想マスタデータタイプ
標準の単一/複合マスタデータタイプと、アドオン単一マスタデータタイプをつなげて一時的なデータを生成する必要があるときなどに使用します。
標準マスタデータタイプには存在しません。
2-1-5. 外部マスタデータタイプ
外部システムのテーブルをそのままインポートするためのマスタデータタイプです。S/4 HANA を基盤システムとしている場合は基本的に使用することありません。
標準マスタデータタイプには存在しません。
2-2. マスタデータワークブック
Excel UI上では、”マスタデータワークブック”からマスタデータタイプを指定し、マスタデータ(属性)の値を表示・変更することができます。
IBPにおけるマスタメンテナンスはこの機能を使用します。
画面例は上記のExchange Rateのとおりです。
登録/更新の流れは、”マスタデータワークブック”機能からマスタデータタイプを指定して表示し、Excel上で値を更新し、変更保存をする、となります。Excel上では1つのシートに対して1つのマスタデータタイプが割り当てられます。複数のマスタデータタイプを指定して表示することができます。
削除の流れは、単一処理からマスタデータタイプを指定し、対象レコードを指定して削除する、となります。Excel Add-In上では誤操作防止のために一括削除はできません。
なお、”マスタデータワークブック”からデータを表示する際は計画ビュー編集と同様に”ワークブックフィルタ”や”属性タブ”、”フィルタ”タブを使用して表示データを絞り込むことができます。
2-3. 各マスタデータタイプの概要
以下のマスタデータタイプについて概要をご説明します。
マスタデータに関する公式リンクは以下です。
SAP Help Portal | SAP Online Help

2-3-1. Currency (単一)
通貨単位を定義します。
導入時に設定したレコードが永続的に使用されることになるため、ユーザが修正する場面はありません。
2-3-2. Target Currency (参照)
通貨単位を定義します。Exchange Rate用の参照マスタです。
すべての項目がCurrencyを参照して自動同期します。
参照マスタデータタイプのため、ユーザが修正する場面はありません。
2-3-3. Exchange Rate (複合)
ある通貨単位を別の通貨単位に換算するための換算係数を定義します。
Currency-CURRID × Target Currency-CURRID をキー項目の前提とします。
計画における為替レートを変えるタイミング(例えば年次や半期)で、設定値を見直します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] IBP独自で定義するマスタとして、S/4↔IBP連携には含まれないことが多いです。
2-3-4. Product (単一)
製品を定義します。
製品の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] S/4の品目マスタ(MARA等)をもとに自動同期することが多いです。
2-3-5. Target UoM (単一)
数量単位を定義します。
導入時に設定したレコードが永続的に使用されることになるため、ユーザが修正する場面はありません。
2-3-6. UoM Conversion Factor (複合)
ある製品における、ある数量単位を別の数量単位に換算するための換算係数を定義します。
Product-PRDID × Target UoM-UOMTOID をキー項目の前提とします。
製品の追加、廃止に伴い、ユーザが追加/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] S/4の品目マスタ(MARM等)をもとに自動同期することが多いです。
2-3-7. Customer (単一)
得意先を定義します。
得意先の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] ①S/4の得意先マスタ(KNA1,KNVV等)をもとに、販売地域などに集約して自動同期するユーザ企業も、②連携せずにIBPに直接登録する運用を取るユーザ企業もあります。
2-3-8. Customer Product (複合)
ある得意先に販売する製品を定義します。
Customer-CUSTID × Product-PRDID をキー項目の前提とします。
得意先・製品の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] ①S/4で製品×得意先を紐づけて自動同期するユーザ企業も、②連携せずにIBPに直接登録する運用を取るユーザ企業もあります。
2-3-9. Location (単一)
生産工場・物流在庫・販売 拠点を定義します。
プラントの追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] ①S/4のプラント(T001W等)をもとに自動同期するユーザ企業も、②連携せずにIBPに直接登録する運用を取るユーザ企業もあります。
2-3-10. Location Product (複合)
ある拠点で生産/在庫する製品を定義します。
Location-LOCID × Product-PRDID をキー項目の前提とします。
プラント・製品の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] S/4の品目マスタ(MARC等)をもとに自動同期することが多いです。
2-3-11. Customer Source (複合)
ある拠点からある得意先への販売ルート(製品別)を定義します。
Customer-CUSTID × Location-LOCID × Product-PRDID をキー項目の前提とします。
得意先・プラント・製品の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について]①S/4で製品×プラント×得意先を紐づけて自動同期するユーザ企業も、②連携せずにIBPに直接登録する運用を取るユーザ企業もあります。
2-3-12. Location From (参照)
生産工場・物流在庫・販売 拠点を定義します。Location Source用の参照マスタです。
すべての項目がLocationを参照して自動同期します。
参照マスタデータタイプのため、ユーザが修正する場面はありません。
2-3-13. Location Source (複合)
ある拠点からある拠点への転送ルート(製品別)を定義します。
Location From-LOCFR × Location-LOCID × Product-PRDID をキー項目の前提とします。
プラント・製品の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] S/4の品目マスタ(MARC等)をもとに自動同期することが多いです。
2-3-14. Resource (単一)
製造機械や輸送トラックなどの供給資源を定義します。
資源の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] ①S/4の作業区/資源マスタ(CRHD等)をもとに自動同期するユーザ企業も、②連携せずにIBPに直接登録する運用を取るユーザ企業もあります。IBPは生産スケジューラでなくあくまでRough-cut Capacity Planningまでであり、S/4 HANAの作業区/資源マスタとは粒度が異なることが多いため、個人的には②のほうが多いように感じます。
2-3-15. Location Resource (複合)
ある拠点で使用される供給資源を定義します。
Location From-LOCFR × Resource-RESID をキー項目の前提とします。
プラント・資源の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] ①S/4の作業区/資源マスタ(CRHD等)をもとに自動同期するユーザ企業も、②連携せずにIBPに直接登録する運用を取るユーザ企業もあります。IBPは生産スケジューラでなくあくまでRough-cut Capacity Planningまでであり、S/4 HANAの作業区/資源マスタとは粒度が異なることが多いため、個人的には②のほうが多いように感じます。
2-3-16. Transportation Resource (複合)
ある拠点からある拠点への転送ルートで使用される供給資源(製品別)を定義します。
Location From-LOCFR × Location-LOCID × Product-PRDID × Resource-RESIDをキー項目の前提とします。
プラント・資源・製品の追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] IBP独自で定義するマスタとして、S/4↔IBP連携には含まれないことが多いです。
2-3-17. Production Source Header (単一※)
ある拠点で生産するある製品(親)の部品表/BOMを定義します。
単一マスタではありますが、Location-LOCID × Product-PRDIDを前提とするために属性チェックを設定します。(結果的に複合マスタと似た扱いになります。)
BOMの追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] S/4のBOMマスタ(STKO等)をもとに自動同期することが多いです。
2-3-18. Production Source Item (単一※)
ある部品表/BOMに使用される製品(子)を定義します。
単一マスタではありますが、Product-PRDID × Production Source Header-SOURCEIDを前提とするために属性チェックを設定します。(結果的に複合マスタと似た扱いになります。)
BOMの追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] S/4のBOMマスタ(STPO等)をもとに自動同期することが多いです。
2-3-19. Production Source Resource (単一※)
ある部品表/BOMで使用される供給資源を定義します。
単一マスタではありますが、Resource-RESID × Production Source Header-SOURCEIDを前提とするために属性チェックを設定します。(結果的に複合マスタと似た扱いになります。)
BOMの追加、項目変更、廃止に伴い、ユーザが追加/更新/削除します。
[S/4 HANA↔IBP連携について] ①S/4の能力マスタ(KAKO等)をもとに自動同期するユーザ企業も、②連携せずにIBPに直接登録する運用を取るユーザ企業もあります。IBPは生産スケジューラでなくあくまでRough-cut Capacity Planningまでであり、S/4 HANAの能力マスタとは粒度が異なることが多いため、個人的には②のほうが多いように感じます。
2-4. S/4 HANA ↔ IBP 連携の考え方
「IBPではS/4 HANAのマスタを同期できる」と耳にするかと思いますが、それはどのようにして実現しているのでしょうか。
前提として、SAP社は、”SAP Cloud Integration for Data Services (CI-DS)”というS/4 HANA↔IBPの連携システムを提供しています。
S/4 HANAのテーブルやCDSViewを、IBPのマスタデータタイプに接続してIBPのマスタデータタイプを登録/更新/削除することができます。
この接続を毎日の夜間処理で実行することで「S/4 HANAとIBPを同期」することができます。
一方で、マスタデータタイプの源泉となるS/4 HANAのテーブルやCDSViewはどのように定義しているのか、というと、それはユーザ企業によって様々です。
つまり、例えば明確にS/4 HANAの得意先マスタとIBPのCustomerを同期する仕組みはSAP標準機能としてありません。あるのはS/4 HANAのテーブルとIBPのマスタデータタイプをつなぐ仕組みだけです。
よって、S/4 HANAの各種マスタからIBPに連携するためのデータを抽出・成形するのは導入ベンダーのテンプレート機能が主軸になります。
基本的には上記のマスタデータタイプの説明の通り、対応するS/4 HANAのマスタデータを抽出しています。
しかし、計画業務上不要なデータをIBP上に保持しないために特定の品目タイプだけIBP上に保持したり、特定のプラントだけIBP上に保持したり、あるいは得意先マスタを販売区レベルでまとめて1つのCustomerとしてIBP上に保持したりなど、考え方は様々です。
S/4 HANA↔IBPのマスタ同期の設計は、導入ベンダーのテンプレートを基盤として、ユーザ企業の要件を満たせるように導入プロジェクトにおいて設計開発をしていくことになります。
いずれにしても、S/4 HANAの品目・プラント・得意先のすべてをIBP上で保持することは適切ではありません。
S/4 HANA↔IBP連携は導入プロジェクトで検討しなければならないことをご理解いただければと思います。
Step.3 マスタデータタイプとは【システム担当者、カスタマイズ設計開発者レベル】

(更新予定:マスタデータタイプ定義、属性割り当て、Description、計画範囲への割り当て、他)
※各概念のStep1,2を優先して執筆予定です。