Step.1 バージョンとは、シナリオとは【概要レベル】
バージョンとは、「(主に部門全体で共有される)別次元の計画」です。
具体例でいえば、Best Practiceにおける以下がバージョンです。
- Base Version (基本バージョン)
- Downside Version
- Upside Version
- Planning Version with Version-Specific Master Data
バージョンは事前に定義する必要があり、各ユーザが作成/削除することはできません。
シナリオとは「(主にユーザごとに使用する)What-if分析用の仮計画」です。
具体例でいえば、通常系(Baseline)以外に、以下のようなシナリオが考えられます。
- オーバーホールなどで自社工場で製品を生産できない期間において、
「生産を前倒ししするか、別の拠点で生産するか」のWhat-ifシナリオ分析 - 工場の能力利用度(生産キャパシティ)が100%を超えている期間において、
「生産を前倒ししするか、別の拠点で生産するか、残業を見込んで能力供給を上げるか」のWhat-ifシナリオ分析
シナリオは各ユーザが自分で作成/削除することができます。
Step.2 バージョンとは、シナリオとは【業務ユーザレベル】
Excel UI上では、計画ビュー編集のワークブック設定、”バージョンおよびシナリオ”タブに該当します。
ここでは、導入検討段階や導入PJ中のユーザを対象に、
- バージョンとシナリオの違い
- バージョンの使用用途、実際の導入事例(AOP)
- シナリオを柔軟に使うための設計
をご説明します。
2-1. バージョンとシナリオの違い
Step1.概要レベルの説明の通りですが、SAPヘルプを簡潔に整理してみましょう。
What Is the Difference Between a Version and a Scenario?
- 概要
バージョン
別次元の一連の計画です。バージョンは組織全体で使用されます。
シナリオ
各計画者が固有で想定する代替計画です。特定のバージョンを複製して作成されます。
- 保持データ構造の違い
バージョン
キー数値の値は非依存的に異なります。
例えばBase Versionで100の販売計画に対して、Downside Version(下降予測)では90、Upside Version(上昇予測)では110とする、など。
マスタデータは「基本バージョンのマスタデータを参照する」か、「バージョン独自のマスタデータを参照する」か設定できます。

シナリオ
シナリオによってキー数値の値は依存的に異なります。
例えばBaselineで100の生産計画に対して、別のシナリオAで90としてシミュレーションすることができます。
ただし、シミュレーションとして変更した値以外のキー数値が複製元シナリオで変更されたとき、それは依存的に別のシナリオにも反映されます。具体的には、上記のシナリオAに対するBaselineで販売計画が変更されたとき、その変更はシナリオAにも反映されます。

- 誰が作成できるか
バージョン
計画範囲の設定画面から作成できます。
導入プロジェクトで保持するバージョンを決定し、ベンダーが作成します。
シナリオ
計画ビューのシナリオ管理から作成できます。
各ユーザが流動的に作成・削除できます。
- 誰がそのキー数値を入力できるか
バージョン
全ユーザからアクセス可能です。
シナリオ
作成ユーザから別ユーザに共有可能ですが、共有しない限り別ユーザからアクセス不可能です。
2-2. バージョンの使用用途、実際の導入事例(AOP)
バージョンの使用用途について、Best Practiceではどのような想定か、実際の導入事例ではどのように使われることがあるか、説明します。
- Best Practiceの使用用途
ベストプラクティス(SAPが想定する標準業務)では以下のバージョンが想定されています。
- Base Version (基本バージョン)
通常計画であり、実際に使用する計画です。 - Downside Version
下降予測の計画です。
市場の需要が下降傾向になると仮定した場合の計画を立案します。 - Upside Version
上昇予測の計画です。
市場の需要が上昇傾向になると仮定した場合の計画を立案します。 - Planning Version with Version-Specific Master Data
独自マスタデータを使用する計画です。
Base Versionに登録しないマスタデータ、例えば生産工場Bを建設するかどうか統合事業計画の観点で検討するときに、Base Versionでは定義していないLocation ”工場B”を定義して計画を検討することができます。
- 実際の導入事例(Annual Operating Plan Version)
ベストプラクティスでは上記のようなバージョンが想定されていますが、実際にはどのように使われることがあるのでしょうか。
よくある事例としては、Best PracticeのようなDownside/Upside/Specific-MD などのバージョンは管理するほどの人員がいないため作成しないことが大半です。
代わりに、バージョン機能を使って年次計画を作成することがあります。
Best Practiceの年次計画はあくまでBase Versionのキー数値(AOP Qty、AOP Rev、AOP Profit)で扱う想定となっています。
ただし年次計画の生産計画を扱う想定はありません。
一方で実際の年次計画業務では、生産計画まで保持したいことが大半です。この場合の選択肢として、以下が検討できます。
- Base Versionのキー数値としてAOP Production Receiptなどを追加する
- 別のVersionとして年次計画ごと切り出す
2.を選択する場合に、バージョン「Annual Operating Plan Version」を作成して対応することが可能です。
2-3. シナリオを柔軟に使うための設計
最後にシナリオを有効活用するための設計について解説します。
結論は「 S&OP演算子と合わせて実行する必要がある演算子を0にする 」ことです。
※S&OP演算子とは、簡単に言えばHeuristicやOptimizerなどのことです。
まず他の演算子(例えばコピー演算子など)を、S&OP演算子と合わせて実行しなければならない場合を考えてみましょう。
例えば以下のようなケースがあり、いずれもIBPの標準業務に合わせられない各社固有の背景があります。
- ”生産入庫”に対して数量調整するという標準業務に合わせられず、入庫前の生産タイミングの期間で数量調整をかける必要がある場合
- ”コンセンサス需要計画の数量”で数量調整するという標準業務に合わせられず、各拠点の独立需要にも数量調整をかける必要がある場合
上記のような場合には固有キー数値を追加し、そのキー数値を標準キー数値にコピーする形でコピー演算子を組みます。
ここでS&OP演算子の入力キー数値にコピーするということは、コピー演算子をS&OP演算子と合わせて実行する必要があるということです。
つまりユーザはS&OP演算子の前に必ずコピー演算子を実行するか、あるいはアプリケーションジョブとして定義する必要があります。
もちろん計画担当者は1回の実行で複数の演算子を実行できるアプリケーションジョブテンプレートを望むでしょう。
問題は、Excel UIにおけるアプリケーションジョブテンプレートの実行画面ではシナリオを指定できないということです(2026年時点。今後のアップグレードで指定できる仕様となる可能性はあります)。
対応策として、事前に(アプリケーションジョブテンプレートを組むときに)シナリオを指定することはできますが、シナリオの流動性が失われて使い勝手が悪くなります。
したがって、シナリオの有用性を最大限活用できるようにするためには、「 S&OP演算子と合わせて実行する必要がある演算子を0にする 」必要があるのです。
Step.3 バージョンとは、シナリオとは【システム担当者、カスタマイズ設計開発者レベル】

(更新予定:キー数値のバージョンへの割当、シナリオの管理、OData連携のVersion指定、他)
※各概念のStep1,2を優先して執筆予定です。